命に向き合う行政として――西宮市の動物行政について

動物行政は、感情が先行しやすい分野です。
しかし行政として本当に向き合わなければならないのは、「思い」だけでなく、どれだけ処分せざるをえなかった命を減らせたのかという、厳しい現実だと考えています。

市長に就任して以降、西宮市の動物行政で一貫して重視してきたのは、殺処分の是非を論じる前に、その前段階をどう減らすかという視点でした。
特に猫については、野良猫として生まれ、引き取られ、行き場を失い、最終的に処分を検討せざるをえなくなる――この流れそのものを断ち切らなければ、本質的な解決にはなりません。

そのため市では、動物愛護基金を活用し、猫の不妊手術を中心とした「入口対策」に力を入れてきました。
基金には多くの市民の皆さまからご寄附をいただいており、寄附件数は令和3年度の430件から、令和6年度には707件へと増加しています。寄附額も同期間で約800万円から約1,270万円へと拡大し、基金残高は令和6年度末で約3,010万円となりました。

この基金を活用し、猫の不妊手術等支援事業を段階的に拡充してきました。
毎年おおむね500匹前後の猫の不妊手術を継続的に実施しており、令和3年度は526匹、令和4年度は566匹、令和6年度は563匹となっています。派手な施策ではありませんが、不幸な命を増やさないための、最も確実な取り組みです。

その結果、数字には明確な変化が表れています。
野良猫の引取数は、

令和元年度:110匹

令和2年度:112匹

令和3年度:61匹

令和4年度:105匹

令和5年度:79匹

令和6年度:17匹

と、長期的には大きく減少しています。

また、猫の殺処分数についても、

令和元年度:30匹

令和2年度:22匹

令和3年度:20匹

令和4年度:14匹

令和5年度:21匹

令和6年度:18匹

と、年ごとの増減はあるものの、就任当初と比べれば確実に低い水準で推移しています。

さらに、路上で亡くなった猫の引取数は、

令和元年度:861匹

令和2年度:715匹

令和3年度:543匹

令和4年度:428匹

令和5年度:440匹

令和6年度:376匹

と、こちらも大幅な減少傾向にあります。
不妊手術によって生まれてくる命そのものを減らすことが、結果として、引取数、処分数、路上で命を落とす猫の数を減らしていると考えています。

一方で、ここは率直にお伝えしなければなりません。
殺処分を完全にゼロにすることは、現実には簡単ではありません。

引き取られた猫の中には、どうしても譲渡先が見つからない場合があります。また、重い病気や深刻な衰弱があり、治療を続けることで苦しみを長引かせてしまうと判断せざるをえないケースもあります。そうした場合、行政としても、非常につらい判断を迫られます。

だからこそ市では、「ゼロ」という言葉だけを掲げるのではなく、処分せざるをえない状況そのものを、できる限り生み出さないことに力を注いできました。
不妊手術によって生まれてくる命を減らし、引き取られる命を減らし、結果として処分を検討せざるをえない命を減らしていく――時間はかかりますが、最も現実的で、苦しみの少ない道だと考えています。

最後に、少しだけ個人的なことに触れます。
令和4年8月、我が家に一匹の子猫が迷い込んできました。結果として保護し、今も一緒に暮らしています。市長として何かをアピールしたいわけではありませんが、一つの命を引き取るということが、最後まで責任を負う覚悟を伴うものだということを、身近な経験として実感しました。

動物行政に、簡単な正解はありません。
それでも、処分せざるをえない命を一つでも減らすために、数字と現実から目をそらさず、これからも地道に、しかし確実に取り組みを続けていきたいと思います。

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