市長コラム 令和2年(2020年)11月  平和への思いを、市民と共に受け継いでいこう

先月26日、姫路市手柄山中央公園にある太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔前で挙行された太平洋戦全国空爆犠牲者追悼平和祈念式に参列いたしました。これは太平洋戦争における本土空爆により亡くなられた民間人犠牲者51万人余の方々を供養するため、全国戦災都市連盟として指定を受けた全113都市の決議に基づき慰霊塔が建設され、今もこの日に慰霊式典が行われております。西宮市は戦災都市のひとつであり、市長である私は一般財団法人太平洋戦全国空爆犠牲者慰霊協会の評議員の任に就かせていただいております。西宮市においては、昭和20年3月19日以降の空爆により、825名の方が死没、罹災人口は86,524名を数えます(慰霊塔側柱に刻まれた数字による)。当日は内閣総理大臣の代理や全国の遺族会の方々も多数参加される中で、私も厳粛な気持ちで献花をしてまいりました。

あの大戦から75年という節目となる今年、西宮市では、満池谷の震災記念公園内に「火垂るの墓生誕の地」の石碑が設置されるということがありました。野坂昭如さんが火垂るの墓に込めた思いを、その舞台となった満池谷に形として残したいという方々の思いが実現されました。発起人となった方々の呼びかけに対し、数百名もの方が寄附に応じられたそうですが、それだけ不戦に対する思いを受け継ぎたいという市民の方が多くいらっしゃることに、改めて心打たれたものです。

国際社会においても、大きな動きがありました。被曝者はじめ人類の多くにとって長年の悲願であった核兵器禁止条約の締結国が50を超え、令和3年1月に発効するという歴史的な一歩を踏み出したのです。人類が歩んできた愚かな歴史を鑑みれば、核兵器が再び使用されることがあってよいはずはありません。西宮市は、昭和58年12月に平和非核都市宣言を行っておりますが、本条約が発効に至ったことは、市としても歓迎するものです。原水爆の禁止と人類共存の世界平和が一日も早く実現することを切に願うものです。

慰霊塔のモニュメントは、刀を地中に刺した状態をイメージしているそうです。もう二度と剣を抜かない、つまり二度と争いをしないという誓いをもって亡くなられた方々の慰霊をせんとしようとしているものです。

武器を捨て去るということは、とても勇気のいることです。ただ、人類にとっては環境問題や世界的な格差の拡大などこの地球の存立を脅かす問題が突きつけられている以上、人類同士が争うような余地があるはずはありません。平和への思いを受け継ぎ、行動していくことが私たちに課せられた唯一の道という意識を持って、市政にも向き合っていきたいと思います。

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