市長コラム 2022年(令和4年)9月 幼児教育保育ビジョンに基づき、新たなステージへ

早いものでもう9月、暦の上では秋となります。セミよりもトンボを見る機会が増え、季節の移ろいを感じ、虫を通じて自然の有難さを実感するものです。

さて先月30日に、厚生労働省が令和4年4月1日現在の待機児童数を発表、全国でピーク時の9分の1となる2,944人となり、西宮市においてはまだ52人と相当数が残ってはいるものの、平成30年の413人からは8分の1と激減することとなりました。今後も保育需要の増加が見込まれるため、引き続き待機児童対策の手を緩めてはいけませんが、一方で、この先5年、10年を見据えると、より広範な視野で政策を遂行せねばならないと考えています。

 そうした考えに立ち、西宮市では関係する皆様にもご協力いただき、子育て政策の根幹となる考えを協議して参りましたが、このほど、「西宮市幼児教育・保育ビジョン」としてまとめることができました。これは、幼稚園・保育所・認定こども園などの施設種別や公立・私立などの設置主体にかかわらず、西宮市のすべての施設で「子ども中心の幼児教育・保育」が行われることを目標としています。さらに、施設に通所されていない子どもに対しても、健やかな育ちをサポートできるような取り組みを目指して行きたいと考えています。

 ビジョンの柱は、大きく二つです。ひとつが、「遊び」を大切にすることです。遊び、というと「おあそび」のように捉えてしまう向きもありますが、子どもにとって遊びとは、限りない好奇心を発揮して、自分のやりたいことに向けて活動することです。乳幼児期にのびのびと遊ぶことは、その後の人生における「自ら学ぶ意欲」や「生きる力」の土台となります。私たちはそうした観点に立って、大いにとことん遊べる環境を作る、遊びを見守り支えることを大切にしたいと考えています。

 もう一つが、「親子関係」を大切にすることです。子どもが生まれると、その瞬間から生物学的に母親になり、父親となるわけですが、親子関係が最初から完成されるわけではありません。また、核家族化や地域とのつながりの希薄化が懸念される昨今においては、不安を共有できる相手もないままに戸惑いを感じながら子育てをしている保護者が増えていると考えています。そうしたことから、親子関係を築き上げることを社会全体として支えていきたいと考えるなど、親子と向き合うこと、親子が共に育っていくこと、そして保育者は子供の成長を保護者と共に喜び合うことを大切にする幼児教育・保育に取り組みたいと考えています。

 さらにこのビジョンは、乳幼児期だけでなく、就学以降も意識してサポートしていくことが大切と考えています。西宮市ではこれまで、幼稚園・保育所・認定こども園・小学校がお互いの理解を深め、滑らかな接続に向けた連携を推進することを目的として「つながり事業」を実施してきましたが、今後は今まで以上に未就学児施設と小学校がより密接に連携、情報交換ができるような体制づくりを進めていきたいと考えています。

ビジョンの中には、私たちが大切にしたいと考える二つの点について、コラムとして紹介をしています。それは、「西宮市の豊かな自然の中での健やかな育ち」と、「数値化できない子どもの力(非認知能力)」についてです。こうしたことも踏まえ、ビジョンで示した趣旨を、保護者や施設等の保育者、学校関係者だけでなく、地域社会で暮らす全ての市民の皆さんのご理解・ご協力もいただきながら、今後意欲的に、前に進めて行きたいと思います。

出来上がった「西宮市幼児教育・保育ビジョン」をどうぞご一読いただき、この実行に向けてのご提案などいただければ幸いです!

令和4年9月1日
西宮市長 石井登志郎

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