新型コロナウイルスの勢いが止まりません。7月以降、本市においても感染者数が再び多数確認され、特に7月後半以降は一週間での人口10万人あたりの新規感染者数が11名にも及び、まさに第二波の様相です。20代を中心とした若い層に感染者が多くみられ、そのほとんどは軽症ないし無症状ではありますが、数の増加に伴い、中高年層への感染確認も増えています。一方で、4月5月の緊急事態宣言時のような、社会も経済も学校も止めてしまうようなことはできるだけ避けねばなりません。まさに「withコロナ」の時代に入っていくわけですが、その上で重要なことは、こうした危機の時代においてどのように乗り越えていけるか、この事態において社会全体の柔軟さが問われ、求められているのだと思います。
こうした状況で昨今よく使われる言葉が、「レジリエンス(resilience)」です。レジリエンスとは、弾力、復元力、または病気などからの回復力のことです。強靭さと解釈もされますが、「しなやかに適応して生き延びる力」とも解されます。私も今のwithコロナの時代には、「しなやかに適応して生き延びることができる社会」=レジリエントな社会と考え、単にコロナ前の社会に戻すことのみを志向するのではなくて、この危機を受け入れながら、私たちがしなやかに適応し、変化を受け入れることが大切と考えています。
その上で大切ことは、私たちの日常における様々な活動に関して見直していくこと、つまり「価値の再認識」についてです。日々暮らしていく中で、「あたりまえ」の日常がコロナによって脅かされている、その「あたりまえ」の中には、そう意識していなかったけど日々の生活に不可欠なものもあれば、実はなくてもそうは困らないものもあります。レジリエントに社会を回復していく中で、何を維持し、何を変えていくか、そこにICTの技術などを生かして、新しい社会を作っていくために、改めて私たちの日常の「価値の再認識」について考えてみるきっかけにしていきたいと思います。
具体的には、「エッセンシャルワーカー」という言葉が注目を集めたように、私たちの社会生活を回していくうえで、医療関係者のみならず、食料品スーパーの店員さんやゴミ収集車の作業員の方々の存在が不可欠であることを再認識しました。これらの価値は、現代社会においてとても大切なものです。一方で、便利な大都市にすべてが集まるがゆえに毎日満員電車に揺られながら長時間通勤するのが当然であった日々も、オンライン化が進むこともあり、今後はわざわざ都心に出向くことへの価値そのものが見直されることになるでしょう。
今後、より一層の注目が集まる社会のデジタル化ですが、何もかもがデジタル化すれば全てが解決するわけではありません。例えば学校教育においては、西宮市においても今年度中にすべての小中学生に一人一台の端末がいきわたるような整備を進めているところですが、公教育そのものがすべてオンラインに置き換わるはずもありません。むしろ学業とは別次元の、社会教育面での公教育の役割は大きく、そこにはリアルなコミュニケーションあってこその価値が提供されています。リアルな触れ合いの大切さも、今後重要なカギになると考えられ、接触を避けなければいけないwithコロナ時代のリアルなコミュニケーションのあり方も重要なテーマです。
こうしたことを踏まえ、withコロナ時代の「レジリエントな西宮市」を作っていくために、市民の皆さんのお知恵も拝借しながら、施策を打っていきたいと思っています。先日7月28日には、初の「市長とオンラインミーティング」を行いましたが、市民の皆さんからいただいたご提案がとても参考になりました。これまで培ったものの大切さを認識しながら、しなやかに、変化を恐れず、ひとつひとつ積み上げていきたいと思います。
西宮市長 石井登志郎