4月から、新しい令和2年度がスタートいたしました。例年であれば、新年度の幕開けを満開の桜が彩り、心躍る時期でありますが、本年は本市においても新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、市全体が緊張感を強いられている状況です。市役所としては、国や県とも連携をしながら、感染拡大の防止はもとより、市民生活や経済活動、学校園に対応し、一日も早い収束に向けて全力で取り組んでいるところです。
そうした中で心配なニュースは、この新型肺炎に感染した方や関係者及びそのご家族等に対する誤った情報や不確かな情報に基づいた不当な差別やいじめ、SNSでの誹謗中傷等の人権侵害とも取られかねないような事例が、全国で散見されることです。国内だけの話ではありません。ひと月ほど前、中国に始まるこの新型肺炎はまず日本など東アジアの国へと感染が広がり、その時点では欧米諸国にまでは拡がっていませんでした。そして、ヨーロッパのある国で、アジア人であるというだけで差別的な言葉を投げかけられるというニュースが報じられ、胸を痛めたことが記憶に新しくあります。
人類が感染症に見舞われたのは今回が初めてのことではありません。ペストやコレラ、破傷風に天然痘など、いくつもの苦難に見舞われてきましたが、その際に付きまとったのが、事実に基づかないデマや噂、思い込みに基づく差別による人権侵害でした。こうした歴史の負の側面を私たちは今こそ胸に刻み、この感染症に向き合わねばいけないと思います。
技術革新が進んだ現代は、エビデンスに基づいたサイエンスの時代です。そんな時代ではありますが、新型コロナウイルス感染症は、現時点で全容が解明されていない難敵でもあります。ただ、既にわかっていることもあります。それは、皆さんもご承知のように、このウイルスは飛沫感染によるリスクは高いとされていますが、空気感染のリスクはそう高くない、と言われていることなどです。私たちがすべきことは、専門家会議によって指摘される「三つの密(①換気の悪い密閉空間 ②多数が集まる密集場所 ③間近で会話や発生をする密接場所)」を避け、手洗いなどを励行し感染のリスクを自ら減らすことにあります。事実に基づかない噂や思い込みに流され、誰かの人権を侵害するようなことがあってはなりません。
西宮市では、「人権文化の花咲くまち 西宮をめざして」を基本理念とし、誰もが自分らしく暮らせるまちを目指しています。市民一丸となって新型コロナウイルス感染症対策に向き合う今、私たちは今こそ、人権文化に花咲くまちの一員として、過ごしていくことを意識していきたいと思います。
※西宮市では、市役所での人権困りごと相談や、法務局での相談窓口の紹介などを行い、人権を守っていくための対応をしています。